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耳管開放症と耳管狭窄症について

[2025.07.28]
はじめに
まず最初にお伝えしたいのは、「耳が詰まる」「耳がこもる」といった症状が現れた場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診していただきたいということです。原因が単なる耳垢であれば問題ありませんが、突発性難聴のように、発症から10日以内の対応が重要となる病気である可能性もあるためです。
耳垢や突発性難聴と診断されない場合、次に疑われるのが「耳管(じかん)」のトラブルです。耳管とは、耳と鼻の奥(上咽頭)をつなぐ細い管で、ふだんは閉じており、あくびや飲み込みなどの動作で一時的に開き、中耳の気圧を調整する役割を果たしています。この耳管の働きに異常があると、「耳管開放症」または「耳管狭窄症」という状態になり、「耳が詰まる感じ」「自分の声が響く」「音がこもる」などの不快な症状が現れます。
耳管開放症とは
耳管開放症は、本来閉じているはずの耳管が開いたままになってしまう病気です。多くの方が「耳が詰まったような感じ(耳閉感)」を訴えますが、実際には空気が通りすぎていることが原因です。 特徴的な症状には、「自分の声が耳に響く(自声強調)」「呼吸音が耳に聞こえる」「話しにくさ」などがありますが、「前かがみになったり、仰向けになったりすることで症状が改善する」のが一番の特徴です。原因としては、体重減少、疲労、ストレス、妊娠、利尿剤の使用などが引き金となることがありますが、明確な原因が見つからないことも珍しくありません。
耳管狭窄症とは
一方、耳管狭窄症は、耳管が開きにくくなっている状態です。風邪やアレルギーなどによって耳管の周囲に炎症や腫れが生じることで発症しますが、こちらも明確な原因が特定できない場合があります。 症状としては、「耳が詰まった感じが続く」「“ポン”と抜けないような感覚」が代表的で、悪化すると滲出性中耳炎を併発することもあります。
診断と検査について
ティンパノメトリーで中耳に陰圧が認められる場合は、耳管の機能が異常である可能性が高いです。また、前かがみになったり仰向けになったりすると症状が軽減する場合は、耳管開放症が疑われます。耳管機能検査が可能な医療機関では、耳管の働きに異常があることを直接的に検出できる場合があります。 ただし、耳管開放症や耳管狭窄症は、症状と検査結果が一致しにくいことがしばしばあります。「耳が詰まる感じ」や「自分の声が響く」といった症状は主観的なものであり、検査で明確な異常が見つからないことも少なくありません。そのため、これらの疾患の診断には、問診やその他の診察所見を総合的に判断していくことが一般的です。
治療について
耳管開放症の治療としては 、点鼻薬で鼻咽腔の粘膜を腫らして耳管を一時的に閉じる 、鼓膜にテープを貼って音の響きを緩和する 、重症例では耳管内にシリコンを留置するなどの手術的治療が検討されます。 また、脱水や栄養不足が関係している場合は体調管理も重要です。 耳管狭窄症の治療では 、鼻や咽頭の炎症・アレルギーの治療 、耳管通気(カテーテルで耳管から空気をいれる処置) などが行われます。
治りにくさと病気との付き合い方
軽症例では自然と症状が改善することもありますが、治療がうまくいかないケースも少なくありません。とくに耳管開放症は厄介で、軽症では確立した治療法がない一方、重症例では手術が必要になることもあります。 ただし、命に関わる病気ではなく、手遅れになることもありません。大切なのは、この病気を正しく理解して焦らず対応していくことです。
最後に
ここまで読むと「急がなくてもいいのでは?」と思われるかもしれませんが、耳が詰まったりこもったりした場合は、突発性難聴など早期対応が必要な病気の可能性もあります。 ですので、違和感があるときはできるだけ早く耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。
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